ストーリーを語り、戦略的ゴールを設定する 「声をあげる」から一歩先へ〜効果的な変化の起こし方〜レポート

あらゆる人からの#MeToo、医学部不正入試の発覚、就活セクハラ・キャンパスレイプへの抗議、職場でのヒール・パンプス強制に反対する#KuToo、全国各地に拡がるフラワーデモ……。ここ数年、日本社会に蔓延るジェンダー問題に対して、「おかしい」と声をあげる人が、特に若い世代を中心に増えてきました。

声をあげにくいこの社会で、署名やデモなどのパブリックアクションが増えてきたこと、それによって社会全体に「性差別・性暴力は重大な社会問題である」という認識が広がりつつある現状に、希望を感じています。

だからこそ、この盛り上がりを一過性のものとして終わらせたくない。これからアクションを起こす人々がもっともっと増え、具体的かつ構造的な変化に確実に繋がるようにしたい。

そんな思いから、ちゃぶ台返し女子アクション(以下、ちゃぶじょ)は2019年7月27日、団体設立4周年を記念した公開イベント「声をあげるから一歩先へ〜効果的な変化の起こし方〜」を開催しました! 当日の様子をレポートします。

会場は、東京・中目黒にある株式会社ヒトカラメディアオフィス。定員MAXの30名が集まりました。

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司会を担当したちゃぶじょ理事の安田晶子さんのオープニングトークから始まり、続いて、共同代表理事の笠井貴代さんが挨拶を務めました。貴代さんは、幼少期にショックを覚えた父から母へのモラルハラスメント、社会人になって自身が体験した上司からのパラーハラスメントについて語り、結婚後には家庭内でのジェンダーロールに違和感を抱いたという話をしました。

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「女性だから、妻だから、家事は私がやらなきゃいけないということになぜかすごく囚われていたんです。でもある晩、お皿を洗いながら、涙が止まらなくて。そんな時に知人に誘われてちゃぶじょのワークショップに参加して、『私は家事を平等にしたい』と言ったら、他の参加者の方から『あなたは間違ってないよ』と声をかけてもらって、とても勇気をもらいました。一人だったら我慢して押し殺してしまう気持ちを、誰かからパワーをもらって『変えられる』と思えることにすごく感動して、ちゃぶじょの活動を広めています」

アイスブレイク&偏愛マップ

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最初のプログラムは、自己紹介とアイスブレイク。4人程度のグループで行いました。

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アイスブレイクのテーマは、「偏愛マップ」。一人一枚A4の紙の真ん中に自分の名前を書き、その周りに自分の「偏愛」しているものを広げていきます。ここでの「偏愛」とは、自分が好きだと思うものや没頭していること、人から言われなくても進んで取り組んでいることなど。2分でマップを作り、グループ内で自己紹介と合わせて発表していただきました。

あなたの心の壁はどんなもの? 行動を阻むマインドセット

第1部は、ワークショップ「行動を阻むマインドセット」。ここでは、ちゃぶじょ共同発起人で、NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン共同創立者のの鎌田華乃子さんが進行しました。

華乃子さんは自己紹介の中で、幼少期の経験から環境問題に関心を抱き、NGOやNPOの活動を知ったこと、ちゃぶじょの活動を通して、自身が過去に受けた性暴力被害と向き合うことができたことなどを話しました。

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「私たち、ちゃぶじょは活動の中でいろいろなチャレンジをして、何度も壁にぶつかりました。例えば、人員不足。同じメンバーでやり続けても、活動が広がっていかないし、疲弊してしまいます。実際に刑法改正のキャンペーンをやっている時は、本当にしんどかったです」

その原因について、華乃子さんは周囲へのヒアリングの結果として以下を挙げました。

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さらに、内閣府が全世界の中高生を対象に行った調査によると、「私の参加によって社会は変えられると思う」という質問に対して「Yes」と答えた日本の中高生は30.7%、アメリカとドイツは50%を超えていたそうです。また、同じアジア圏である韓国や台湾と比べても市民のアクションに対する意識は、日本がダントツに低いと華乃子さんは話します。

「じゃあ日本って、昔から和を尊んでアクションをしない国だったのかなというと、実はそんなことはありません。例えば、室町時代に盛んになった一揆があります。近年だと、日米安全保障条約の改定に反対する安保闘争なども挙げられます。昔の人たちは頑張って声をあげてきたし、変えてきた歴史がある。じゃあ今はどうなのか。私は、今は転換期なんじゃないかな、と思っています。また声をあげる人が増えてきているから。私たちは、声をあげづらい『出る釘は打たれる』という環境を変えていかなくてはなりません」

「そこでちゃぶじょが実践しているのが、まずは運動を楽しむということ。悩みを持つ人同士が集まってちゃぶ台を返したり『#性を守る法を作ろう ダンス・プロジェクト』などを展開したりして、参加者が楽しんで社会を変えていく方法を探っています」

「それから、活動を続ける上で、一人のリーダーだけが頑張り続けてしまうケースもよく見られます。他のメンバーも動くけど自分事じゃなかったり、主体的に動いてくれなかったり。こういう状況が続くと、次のリーダーが育っていきません。それを乗り越えるために私たちが実践しているのがコミュニティ・オーガナイジングなんです」

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「ちゃぶじょでは、スノーフレークリーダーシップという、雪の結晶の中心から広がってたくさんのリーダーを育てていくことを目指して活動しています。しかしそのためには、日本社会のヒエラルキーを打破していく必要があります。上から言われてやるのが当然という環境に身を置いていると、自分の頭で考えるのをやめてしまうからです」

「じゃあどうすればヒエラルキーを乗り越えていくことができるのか。とても有効だと感じているのは、ストーリーを語り合うことです。なぜジェンダーの問題に関心を持っているのか、なぜちゃぶじょの活動に共感するのか、それはどういう人生の経験からくるのか。話すことで、相手の感情を動かして心で繋がることができると思います。私たちってこういう価値観、思いを共有しているよねという“私たちのストーリー”を語っていくことで、チームとしてヒエラルキーがなくなって、みんなのやる気が高まっていくと感じています」

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ここで、参加者同士のワークへ。先ほど自己紹介したグループで、自身が感じる「心の壁」について話し合っていただきました。行動する前に抱いていた心の壁、行動する中で生まれた心の壁、仲間との間の壁、周囲の人々や環境との壁……。また、それらを乗り越えられた瞬間はどんなものだったのか。参加者たちは、自分の体験について語り合いました。

参加者:高校1年生です。私が中学2年生になった頃にクラス内でいじめが起こりました。これから1年間このクラスで過ごしていく中で反発すると、みんなから目をつけられて、一人になっちゃうんじゃないかって不安があって。でもその時に初めて自分から声をあげて、友だちとケンカをしました。そのことがあったおかげで、その子とはお互い素で話せる関係になって、今でも遊ぶくらい仲良くなりました。今までは自分の意見を言わないで、誰かのあとに付いていっている感じだったのが、自分の考えを持つようになって、自分の軸を探すきっかけになりました。

参加者:最近僕の中で到達したのは、人間って自分の自我が支えられないと生きていけない生き物だよなっていうこと。ソーシャルアクションには関心あるけど社会運動しても変えられる気がしないって人が、勇気を出して活動に参加しても、上手くいかなくて自我が傷ついてしまうことってあると思うんですよ。だから、もし身近な人が動けていないっていう時には、もしかしたら自我が傷つかないように心の壁を作ってしまっているのかもしれないので、暖かく働きかけていきたい。そうすることで、私たちの思いはもっと拡がっていくんじゃないかなと思いました。

変革の仮説をたてよう 目指すべきゴールへの戦略とは

続く第2部では、ちゃぶじょ共同代表理事の大澤祥子さんが登壇。先ほどの「心のワーク」とは打って変わって「頭(戦略)のワーク」を行いました。心の壁を乗り越えたところで何をすればいいのか、一歩先へ進むためにどんな戦略を立てるか、参加者と一緒に考えました。

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「私にとって転機となったのは、大学の最後の年にフランスに留学に行ったこと。その大学は世界中から留学生が来ていて、中には自分と同世代の学生アクティビストが多かったんです。今まで私は、『おかしいな』って思うことがあっても我慢したり、怒っても不燃焼で自分だけが抱え込んじゃったりという状況だったんですけど、彼女・彼らの話を聞いて『怒ったら変えればいいんじゃん!』と思えるようになりました。年齢も立場も関係ない。すごく希望をもらったのを覚えています。それをきっかけに、日本に帰国して社会活動を始めるようになりました」

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「それでは、どういう困難、どういうチャレンジが戦略においてあるのかっていうことを掘り下げていきたいと思います。例えば、ゴールが大きすぎたり、変えたいことが多すぎて具体的な変化に絞り込めなかったりということは起こりがちです。重要なのは、戦略の部分。でも、そもそも戦略を作るのって大変だし、面倒くさいし、とりあえず動きたい。戦略はどんどん後回しになって、とりあえずイベントを開いて、反応を見て、またイベントを開いて、でも変えられた実感はあまりない。こういうモヤモヤが活動当初はすごくありました」

「この原因は、情報が足りないことや優先順位をつけるのが怖いということ。『これを変えていきます』、『こういう風にやります』と明言しちゃうと、失敗するのが怖くなります。ある意味自分を守るために、あえて達成しているかしていないか判断がつかないような大きいゴールだけを設定しちゃうことがあるんです」

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「私たちが刑法改正のキャンペーンを始めたのは2016年6月。性暴力の問題を解決するために2017年6月までに性犯罪刑法の改正を目指す、と解決策を設定しました。次の国会が終わるまでに、私たちが考える改正案を国会で通すというのが戦略的ゴールになっています。大きな問題の解決には、複数の部分的な解決策が必要だというのがポイントです。大ゴールが『性暴力のない社会』であれば、戦略的ゴールは『刑法改正』。性暴力を助長・許容する社会構造にはいろんな柱(pillar)があるけど、私たちは法律に着目しました。その他にも、私たちが今やっているように大学での性的同意ワークショップも具体的な一歩だと思います」

祥子さんは、戦略に必要なのは、変革の仮説を持っておくことだと話します。変革の仮説とは、望む変化を得るために同志(当事者)の持つ資源をどのように創造的に使えばパワーに変えられるかという「変化のストーリー」を指しています。

「もう一つ関係者がどういう人がいるか考える上で、『パワーマップ』というのも役に立ちます。これは自分が変えたい課題に関するあらゆる関係者において、誰が一番反対してて誰が一番賛成してくれるか。その人が変化に及ぼす権力が大きいか小さいかで関係者をマッピングしていくものです。そうすると、強く賛成してくれて、決定権もある程度持っている人がすごく強力なアライになることがわかります。逆に、強く反対していて影響力が大きい人をどういう風に取り込んでいけばいいかっていうのを考える道しるべになります」

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ここで、「変化の仮説」を作るミニワークにチャレンジ。

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「この課題に対して、どういう風にちゃぶ大を変えられるでしょうか? まずは誰がターゲットになるのかを具体的に考えてみます。新入生オリエンテーションで性的同意を教えることを決める権利があるのは、学長です。ではターゲットである学長にアプローチするために、学長が関心を持つこととはなんだと思いますか?」

会場からは下記のような回答が挙がりました。

・大学の評判が良くなること
・自分の任期を長くしたい
・受験生、入学者を増やしたい
・問題を起こしたくない。
・学生に安心して学んで欲しい

さらに祥子さんは、「これらの関心を満たすために、私たちが持つどういう資源が学長には必要になってくると思いますか?」と参加者に問いかけました。

・優秀な教授、学生、卒業生
・学生からの評判
・学費
・時間
・SNSなどの発信力
・学生同士の繋がり

次に、「学長の関心」と「学長に必要な私たちの資源」を組み合わせて、性的同意を教えることを義務化するために、学長にどんなアプローチをしていくか、各グループで話し合いました。「もし私たちがこういう資源を使ってこうしたら、こんなことが起こるだろう。なぜなら……」と、変革の仮説を立ててみます。参加者からは下記のような意見が挙がりました。

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参加者:オープンキャンパスで来場されている高校生や親御さんに向けて、性的同意について学ぶ講座がありますよっていうことを紹介します。これから入学しようと思っている人たちが安心して大学生活を過ごせるんだと思えるようなすごく良いPRになるんじゃないかと思います。

参加者:私たちのグループでは、オリエンテーションの時には在校生や教授たちも協力しているだろうということで、在校生で性的同意についての紹介コンテンツを作ってみたらどうかという意見が出ました。もしそれが取り入れられたならばメディアにもニュース価値のあるものとして提供されて、大学の評判が上がりますよというプレゼンテーションを学長に行います。また、取り入れられないのであれば、オリエンテーションには協力しませんよ、とアピールする。

参加者:10年前に起きた事件がきちんと解決されているのかを学長に問い合わせること。それと、アンケートや署名を使って学生の意見を集めたり、教授を味方につけてアプローチしたりします。新聞社とか、ジェンダー問題に取り組む団体と繋がってアクションを起こしていくといった意見も出ました。

この組み合わせならこういう切り口でアプローチできそう。ここに焦点を絞ってピンポイントで訴えてみよう。自分たちがも持つ資源を活用して様々な変革の仮説が生まれました!

最後のワークでは、参加者同士の対話の時間を設けました。実際、活動をする中で、またこれから活動していく中で、自分や仲間が戦略の部分でどんな困難や壁に直面しているか。また、壁の乗り越え方について、今日のワークショップでどのような学びがあったのかを話していただきました。

参加者:今私がゴールだと思っているのは、みんなが自分の声で喋れる社会。戦略的ゴールとしては、PTAを保護者に取り戻すということを考えています。現実問題、お母さんたちはすごい同調圧力の中でものを言えなくて、子どもが人質のようになっていて喋れなくなっちゃうっていうことがあるんです。PTAを誰が使っているのか。実際は教育利権だから政治家とか文科省とかが当てはまると思うんですが、そこが当事者には見えてないんです。 PTAの保護者の中には、政治の話をしたくないっていう人たちも多いと思いますが、そんな人たちとなんとか手を繋いでやっていきたいと思いました。今日は、すごく短い時間でいっぱい武器をもらった気分です。ありがとうございます。

参加者:慶應大学大学院生です。今大学では男女差別がひどくて、他の私立大学に比べても多様性推進が遅れていて、理事とか推進室の方もあまりやる気がないので、下からプッシュしていかないと何も動いていかないという状況があって、活動を始めたところです。戦略の部分など自分だけではわからなかったので、今日はいろんな人の意見が聞けてよかったです。それと、もう一つ、今は、大学院生と若手研究者が貧困すぎてやばいという現状があって、このままだと科学力も日本の社会基盤が終わってしまうんじゃないかということで、それを変えていくためのアクションも起こしています。今回、学んだことを他のメンバーにも共有したいと思います。

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クロージングでは、ちゃぶじょからのメッセージということで、セクシュアル・コンセント・チーム、性別役割分担を考え直すチームから活動の紹介を行いました。最後には、参加者全員で写真撮影も。

ちゃぶじょ4周年という記念すべきイベントに、これだけ多くの人にお越しいただき、とてもうれしく思います! このイベントを通じて、たくさんの価値観に触れることができ、また目指すべきゴールという共通認識が生まれ、ちゃぶじょメンバーも大きな希望をもらいました。

参加者の方々からは「今日学んだことを仲間や友人とシェアして今後の活動に繋げたい」というポジティブな感想もいただきました。こうして声が繋がっていくこと、新しい一歩が生まれることに、大きな価値を感じます。あなたの勇気ある声が、誰もが自分らしく生きる社会を作るための一歩となりますように。

Written by あやな(デジタルチーム)

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