【後編】「声をあげる」ってどういうこと? メディアと表現について考えるシンポジウム参加レポート

メディアと表現について考えるシンポジウム「わたしが声を上げるとき」イベントレポート前編はこちらをチェック!

■マスメディアが考えるべきなのは、どんな価値観を未来に向けて作っていくか

ゲストのプレゼンが終わり、後半はトークセッション形式で進められました。最初の話題は、最近物議を醸した読売テレビのニュース番組「かんさい情報ネット ten.」の企画について。

小島さんは「視聴者の反応の多くは『企画がおかしい』というものだったんですけど、中には生放送中に批判のコメントをした若一光司さんに対して『放送事故を起こすな』という声もありました。もちろんこんなVTRを流すこと自体がいけないんですけど、ここで声をあげるのはいい行為であるということをメディアが伝えないといけないですよね」と指摘しました。

武田さんは、同番組の対応について意見を述べました。

「若一さんが怒った後に、女性アナウンサーが『いろいろな見方がありますよね』などと曖昧なコメントを残して終わりました。その瞬間、あの女性が置かれている立場の厳しさがわかった。アナウンサーが悪い、出演者が悪いと批判されがちですが、あの企画を立てて、出演者に公の場でどういう振る舞いをさせるかを決めた責任者がもっと出てくるべきでは」

さらにメディアの報じ方の問題として、武田さんは昨年注目された医学部受験の女性差別についても触れました。

「東京医大の得点差別の問題があったときに、いつの間にか『得点操作』という表現に変わっていました。これは、明らかに差別だと言うべき案件です。その後メディアは、現役の女性医師に『今回の件を理解できますか?』とアンケートをとって6割が理解できると答えたと報じて、そこでなんだか議論が止まってしまったんです。これは性別の問題ではなく、不当な扱いを受けた個人を救わないといけないことなのに。根本的に解決するのではなく、うやむやにしようとする時、男女の問題として処理するのはかなり便利なんですよね」

やがて、テーマは「メディアの中立公正」の話題に。議論はさらに白熱しました。

武田さんは「マスメディアでは中立公正にとらわれて、どんなニュースでも両論併記で構成されることがありますが、出演する人を選んだり、討論の尺を決めたりしている時点で、中立公正なんてありえないんですよね。偏向報道だと言わるのを怖がっているだけでは」と話しました。

武田さんのコメントに、田中先生も賛同しました。

「中立公正や不偏不党というメディアの姿勢は、長らく昭和から平成まで生き残り、令和の時代まで引き継がれてしまいました。この先マスメディアが生き残っていくためには、どんな価値観を未来に向けて作っていくのか、もっと真剣に考えて、番組編成をしていくこと。どんな価値観を取り上げ、どのモラルに寄り添うのかを選択していかないといけません」

■メディアの仕事は「喋ること」じゃなくて「聞くこと」

最後に、武田さんは、これからのメディアの発信に必要なものとして発信者側の視点から以下のように話しました。

「僕はしつこさが大事だと思っています。去年の財務事務次官のセクハラの件、最初はメディアも報じていたけれど、いつの間にか新聞記事の見出しが『止まらない麻生節』にすり替わっていったんです。なんとなく話題に飽きてきたときにこういう言葉が出てくる。福田事務次官が辞任してそのまま問題は終わってしまいました。解決していないことについて、3ヶ月後でも1年後でもしつこく言い続けることが大事だと思います」

田中先生は、メディアとともに受け手が認識すべき環境の変化について語りました。

「今は言論空間がSNSに移行して、次々新しいトピックや問題が出ていて、次々みんなで忘却していきます。なので、一つひとつ踏みとどまって、きちんとした対話の場を作っていきたい。メディア環境が大きく変わってきている中で、それをもう一度作り直していかないといけないのかなと思います」

和奈さんは、受け手である私たちに必要なものについて力説しました。

「鍵となるのは自己肯定感だと思います。今の日本は、他人から自分の価値を決められてしまいますよね。エンパワメントが全く足りていないです。自己肯定感が高い人を尊重するメディアがあれば、もっと自信を持つ人が増えると思う。だから、メディアはそういう人たちをエンパワメントする環境を作る必要があります。自分ならできると信じて一歩を踏み出させることが大事です」

ナリさんは、韓国の社会運動の歴史について言及し、市民の力で世の中を変えていく重要性について話しました。

「#MeToo 運動における日本と韓国の違いについて考えてみると、韓国には民主主義を自分たちの手で勝ち取ったという歴史が見えてきます。声をあげて世の中を変えたという成功体験があれば日本も変わるはず。声をあげるということは、みんなが前に出るのではなく、大勢に紛れて顔をちょっと隠しながらでもいいと思う。大切なのは声を出すことです」

小島さんは、今回のシンポジウムのテーマに立ち返って意見をまとめました。

「声をあげたら聞く人が必要ですよね。メディアは喋るのが仕事ではなく、聞くのが仕事だと思う。あの人の声もこの人の声も聞いて、それをそのまま出すだけじゃなくて、他の人に届けて、建設的な議論の場を作る。まずは聞くことがとても大事なんだとよくわかりました」

今回のシンポジウムを通して、社会を良い方向に進めていくためには、メディアとオーディエンスが連帯する必要があると強く感じました。個人としてできることは、やっぱりどんなに小さくても声をあげること。そして、その声をメディアに直接届けることです。

社会に対して大きな影響力を持っているのはメディアですが、そのメディアに影響を与えるのはオーディエンスです。私たちの声が社会を変えられるという自信を持って、今後も活動していきたいと思いました。

Written by あやな(デジタルチーム)

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