【前編】「声をあげる」ってどういうこと? メディアと表現について考えるシンポジウム参加レポート

テレビや新聞、雑誌、インターネットなど、私たちが情報を得るためのメディアは数多く存在します。昨今、差別的であったり攻撃的であったりするメディアの表現に対して、批判の声が上がり、それらが可視化されるようになりました。

これからの時代、メディアの発信はどうあるべきなのでしょうか。メディアと表現について考えるシンポジウム「わたしが声を上げるとき」が5月18日、東京大学で開催されました。

同シンポジウムは、今回で5回目の開催。ちなみに、2017年に行われた第1回目には、ちゃぶ女のさちこも登壇させていただきました!

今回の司会はNHK国際放送局記者の山本恵子さん。ゲストには、エッセイストの小島慶子さん、ライターの武田砂鉄さん、Voice Up Japanの山本和奈さん、株式会社 キュカのウ ナリさん、大妻女子大学の田中東子先生の6名が登壇しました。


まず、東京大学の林香里先生の挨拶からスタート。

「メディアというものが、民主主義社会の中で重要な役割を果たしていることについて、私たち研究者が市民のみなさまと一緒に考える機会を作りたいと思い、シンポジウムを開催しました。今回は、私たち一人ひとりが当事者として声をあげるというのはどういうことなのか、探っていきたいと思います」

■小島慶子さん「社会を変えたのは“当事者の声”」

日本の #MeToo 運動は世界各国と比べて遅れをとっているとよく言われますが、シンポジウムを始めた2017年と比べると世の中に変化が見られた、と小島慶子さんは話しました。

「2018年4月の福田財務事務次官によるテレビ局の女性記者に対するセクハラ事件をきっかけに、メディアで働く女性たちが連帯しました。メディアが変わらなければ日本の社会が変わらないという強い思いがあったんです。そこから一気にハラスメントに関する報道が増えました。皆さんも実感していらっしゃると思います。この社会には当たり前だと思っていたものの中に、いろいろな種類のハラスメントがあるんじゃないかと」

そんな中、今年に入って早々、大きく話題になったのは週刊SPA!の「ヤレる女子大学生RANKING」でした。この問題にすぐさま声をあげたのが、今回のゲストの一人である山本和奈さん。和奈さんは、週刊SPA!への抗議署名を立ち上げ、編集部と対話を行いました。和奈さんの行動を例に挙げながら、小島さんは日本社会の変化について語ります。

「伊藤詩織さんが声をあげた2017年からわずか1年ちょっとの間に、声をあげた人が支持され、対話に繋がる状況が生まれました。さらに、それが変化を生んで、一つの形になるというところまで至ったわけです。だから、日本も変わってないように見えても、大きく変わっているのだと私たちは考えています」

「この1年の間に最も社会を変えたのはなんだったのか? それは当事者の声です。当事者が声をあげ始めたのと同時に、一方では声をあげられない当事者の存在も見えてきました。声をあげていても聞き届けられないものもあります。なぜ声をあげられない当事者がいるのか。なぜ聞き届けられず、消えていく声があるのか。メディアにできることはなんなのか。今日は考えていきましょう」

■武田砂鉄さん「おかしいことでも、繰り返されると慣れてしまう」

今回、唯一の男性ゲストである武田砂鉄さんは、昨今のジェンダー格差を巡る問題についてイベントなどで発言するたびに「なんで女性の味方をするんですか?」と聞かれるのだそうです。この問いのおかしさについて、元NGT48の山口真帆さんの一連の報道に触れながら答えました。

「NGT48の山口さんの件では、ファンの男性に暴行された後、なぜか彼女がステージの上で謝罪させられました。暴行された人が謝らされるって明らかに異常ですよね。もはや男とか女とかの問題じゃありません。これに対しておかしいと言ったら『女性の味方をしている』と言われます。その見方がそもそもおかしいですよね」

芸能関連の記事を書くことが多い武田さんは、アイドルの「恋愛禁止ルール」についても言及。

「あのアイドルグループは恋愛禁止というルールを設けています。これはもう各所で言っていますが、恋愛禁止というのは人権侵害そのものです。メディアの人たちも最初はおかしいと思ったかもしれないけれど、それが繰り返されるうちに、慣れてしまうんです」

■山本和奈さん「日本では出る杭は打たれる風潮がある」

メディアの“おかしさ”に気付き、いち早く声をあげた山本和奈さん。前述した週刊SPA!編集部への抗議をきっかけに、Voice Up Japanを立ち上げました。

「もともと私はこの『ヤレる』って言葉がすごく嫌いなんですよ。モノ扱いじゃないですか。SPA!の件は、同意もなく『ヤレる』とばかり主張していて、性犯罪に関わると思ったんです」

日本には、女子高生を「JK」、女子大生を「JD」と呼び、ブランド化している面があります。そんな背景のもと生まれた週刊SPA!の特集に対して、和奈さんは疑問を抱いたと語気を強めます。

「大学生の中には未成年者も含まれますし、私たちは勉強することが目的です。それなのに、影響力のあるメディアが何でこんなことを言っているのかと驚きました。私の大学はこのランキングには入っていませんでしたが、無関係だとは思えなかった。たとえ私が女性でなかったとしても、大学生でなかったとしても、おかしいと感じたと思います。もし自分の子どもがこんな目に遭うと考えたら、たぶん誰もがこの問題に対して当事者意識を持てるのではないでしょうか」

実名で顔を公開して抗議したことによって、和奈さんのもとにはバッシングの声も多く届いたそうです。和奈さんはそんな声には屈しない姿勢を見せました。

「出る杭は打たれるという日本の風潮に問題があると思います。私に届く批判のメッセージは、ほとんどが匿名です。名前も出せない人からのバッシングなんて正直気にしないです。もし対面で来るのならば、私は自分が正しいことをしている自信があるので、相手と対話します」

■ウ ナリさん「あなたの声が誰かを励ますことにつながる」

ハラスメントや差別に関する相談コミュニティサイト「QCCCA(キュカ)」を立ち上げたウ ナリさんは、韓国出身のエンジニアで、Yahoo!知恵袋の元スタッフ。Yahoo!知恵袋を運営する中で、相談サイトの問題点に気付き、QCCCAを始めたのだそう。

「Yahoo!知恵袋の運営に携わって感動したのが、オンライン上のコミュニティで全然知らない人同士が助け合っていたこと。なんて素晴らしいんだろう、テクノロジーってすごいなと思いました。ただ、Yahoo!知恵袋だと被害者を貶めるような回答が投稿されても、それをスタッフの判断で消すことができないんです。個人情報だったり、自殺未遂に関するコメントだったりしないと消せません。そこでQCCCAの仕組みでは、被害者が見る前にコメントを消せるようにしました。それによってユーザーが安心して悩みを言えるような場を作ろうと思ったんです」

QCCCAでは、「キュカッチ(キュカチーフ)」と呼ばれる、悩みに寄り添って応援してくれる特別なユーザーがいます。キュカッチは、誹謗中傷がないように、相談に対する全てのコメントをチェックして二次被害を防いだり、キュカッチの周囲の協力者へ拡散することで共感者を集めたりといった動きをします。

「悩みを言って共有することって、すごく大変だと思います。でも話すことによって『私は沈黙しない』 という意思表示になるだけではなく、その声が誰かを励ますことにもつながる。QCCCAなら、心ないコメントを見る必要がありません。悩みがある人は、ぜひQCCCAを利用してもらえればと思います」とナリさんは笑顔で話しました。

■田中東子先生「メディアの役割は成功体験の拡散」

大妻女子大学でメディア文化論などを教えている田中東子先生。大妻女子大学は「ヤレる女子大学生RANKING」で2位にランクインしていました。このニュースが話題になった当時の衝撃について、田中先生は以下のように話しました。

「SNSでニュースについて知り、記事を見て私も傷付きました。学生たちはもっとショックなんじゃないかと思いましたし、暴力的な表現がいかに人を傷付けるのかということを感じました」

その後、和奈さんが署名を始めたことをネットを通じて知ったという田中先生。大妻女子大の学生たちに「ICUの学生たちがSPA!の記事に抗議行動をしているのをどう思いますか?」と聞いたところ、4つの反応があったそうです。

「1つ目はやっぱり『あの記事は非常に悔しい』というもの。実はSPA!に限らず、うちの学生たちは『女子大生』という記号によってヤレる女扱いをされることが多々あると言っていました。バイト先の男性に『大妻ってヤレる子多いんでしょ?』と言われてとても傷付けられたと。それに対して、学生たちは『私の友だちではそんな子いない』と言うなど、声をあげるまでいかなくとも、否定はしていると聞きました」

「2つ目は、ICUの学生たちへの感謝です。自分たちのように、傷付けられている側が反論してもバッシングを受けてしまったり、ヤレる女たちが何か言っているというような反応をされたりと、世間に聞き入れてもらえないだろう、と。ランキングに載っていない学校の人たちが声をあげることによって、この企画がいかにおかしいかということが世間に伝わったんじゃないかと言っていました」

「3つ目は、恐怖です。自ら声をあげることによって、自分たちがどれほど傷付けられるか想像すると、身がすくんでしまってできないとのことでした」

「そして、4つ目は『なぜ日本は声をあげにくい社会なのか?』という声。日本の特殊な部分としては、教育の現場でも声を出させないシステムや、意見が違うことを嫌う教育環境があります。それらが覆いかぶさって、声をあげにくい環境を作っていると思います」

SPA!の件は、支援者が声をあげて、被害者の尊厳を守った前例となりました。田中先生は「メディアがこういった成功体験を拡散することで、『もしかしたら私にもできるかもしれない』という意識を作っていけると思う」と話しました。

後編に続きます!

Written by あやな(デジタルチーム)

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